22、性交渉がきっかけになる感染性疾患と不妊の関係(1)

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第22回: 性交渉がきっかけになる感染性疾患と不妊の関係(1)

性感染症(STD)というと、クラミジアや梅毒、AIDSといった疾患が頭に浮かぶと思います。特にクラミジアは不妊の原因として様々な骨盤内の炎症や癒着に関わっている事が分かっております。
これらの性感染症を含め、性交渉が原因となる、様々な疾患の解説を2回シリーズで行なっていきたいと思います。

細菌性膣炎

今回、最初に取り上げたいのが細菌性膣炎です。これは厳密な意味で性感染症ではないのですが、膣炎で最も頻度の高いものであり、性交渉で発症することが多いのが分かっています。

これは膣の中の常在菌のバランスが崩れ、悪玉細菌が異常に増殖した時に起こります。細菌性膣炎は頻度が非常に高いのにどのようにして起こるのかはあまり理解されていません。
新しくセックスの相手を変えた時とか、複数のセックスの相手がいる場合とか、膣洗浄、IUD (子宮内避妊器具)があると細菌性膣炎にかかりやすくなると考えられています。

診断には、診察及び顕微鏡による検査、pHの測定、免疫学的検査などがあります。細菌性膣炎は治療をしなくても良くなることがありますが、治療はメトロニダゾールのような抗菌薬の服用か、膣内クリーム、膣錠などを使用します。
男性は治療の必要がありません。

細菌性膣炎によってHIV、クラミジア、淋菌にかかりやすくなるばかりではなく、人工中絶や子宮摘出などの手術後に骨盤腔内炎症を起こしやすくなります。

これは不妊治療においてマイナスになることは明らかです。

トリコモナス症

病原体は、原生生物の膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis・チツホネマクムシ)です。基本的には尿生殖路の感染症であり、最も多い感染部位は女性の尿道および膣になります。

感染は粘膜に留まり、組織侵入性はありません。男性の場合は排尿によって原虫が排除されてしまうことが多いです。

この原虫は接触によって感染します。
したがって、性交によって男性が媒介者のような役割を果たす性行為感染症とも考えられます。しかし、必ずしも性行為を伴うわけではなく、下着やタオル、便座あるいは風呂をまたぐ際や、出産時に母親から感染する可能性もあります。

日本では一般的に高温であるため問題ないと思われますが、共同浴場で感染する危険性も皆無ではありません。

日本では女性の5~10%、男性の1~2%が感染していると言われております。

男性の場合は感染をしてもほとんど無症状ですが、症状があるとすれば、尿道の違和感、分泌物、排尿時や射精時の違和感などです。女性も無症状の人が大半ですが、症状としては、強いにおいを伴う黄色いおりもの、排尿時やセックス時の不快感、外陰部のかゆみや刺激、それに下腹部痛などです。

症状は、性行為数日後から4週間以内に発現します。

診断は診察と顕微鏡検査で行います。治療はメトロニダゾールという抗菌薬を1回服用し ます。男性の感染者の場合、治療なしでも症状は改善しますが、症状がなくても性交渉の相手を感染させます。性交渉の相手も同時に治療することが必要です。

トリコモナス症の予防に関して十分な研究はなされていませんが、コンドームの使用によりトリコモナス症の蔓延を阻止できると考えられます。

トリコモナス自体は治療が難しいものではないので、きちんと受診をして、処方してもらえば容易に治るものです。しかし、そのまま放置したりしていると炎症が続く事になりますので、前述の膣炎と同様、他の性感染症にかかりやすくなることに結びつきます。

また、このような状況になると精子が卵管に届きにくい環境になるので、妊娠しにくくなるのは容易に想像できることです。

カンジダ膣炎

カンジダは、女性の膣の中に常在菌としてふつうに存在しています。また膣以外にも皮膚、口の中、腸などにも存在しています。通常はなにも悪さをしません。

しかし、膣の中のラクトバチルス(乳酸菌)が減ってしまうような状況(抗生物質を使用した後など)や 体が弱っている状態(糖尿病、ステロイドの薬を服用中など)ではカンジダ菌が増加して悪さをします。妊娠時やピル内服時もカンジダになりやすいといわれています。

女性には非常にポピュラーな症状で、性交未経験者でもしばしば自発し、痒み等性器の異常を感じて婦人科を受診する人のうち多くの割合を占めます。

カンジダ膣炎の主な症状は、おりものの異常と外陰部や腟内の痒み、おりものはヨーグルト状や酒粕状の少しポソポソした状態になることが多く、白色や黄緑色 をしています。

割と特徴的なおりものなので、一度でもカンジダ腟炎になったことがある人なら、再発した時にすぐに分かると思います。

病院での治療は、膣内をよく洗浄し、カンジダ真菌を抑える「抗真菌薬」の膣剤を使用します。

膣剤は1度入れると1週間効き目が続くタイプのもの と、毎日 1個ずつ膣内に入れるタイプのものの2種類があります。たいていは病院で膣内を洗ってもらい、持続タイプの膣剤を入れてもらえば自分で膣剤を使わなくても大丈夫です。

ただ、かなりひどい場合や何度も繰り返して再発しやすくなっている場合は、自宅でも毎日膣剤を入れたほうが確実な治療になります。

大体の場合、症状は3日くらいでおさまりますが、カンジダ菌はまだ膣内に残っており、2週間くらいは治療を続けなければなりません。 外陰部の痒みには、抗真菌薬の塗り薬を使います。この痒みに対してステロイドや市販されている「痒み止め」を使うとかえって悪化してしまうことがあるので、自己判断で薬を使うのはお薦めできません。

予防法は、カビの一種なので、患部がむれないようにナイロンストッキングやぴったりとした服は避け、患部を清潔に保つことが大事です。ストレスの多い不規則な生活を避けることも大切です。

性交渉も膣炎がある状態では避ける必要があります。

カンジダ膣炎が起きやすい方は生活習慣に乱れがあったり、免疫力がダウンする傾向にあります。もちろんそういう時期には妊娠はしにくい訳で、生活を見直すきっかけにして頂きたいと思います。

<最後に>

今回は、よくある性交渉がきっかけになる疾患を取り上げてみました。
上記の3つの疾患の特徴は「かゆみ、臭い、おりもの」です。
これらの症状が出たら上記のどれかを疑う事になります。

恥ずかしいからとそのままにしておくことが、一番良くない対応です。出来るだけ早めの婦人科受診をお勧め致します。

次回はクラミジアを中心に解説をしていきたいと思います

■コラム執筆 池上文尋 氏

オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。

池上先生のイラスト
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