5、排卵障害の治療(2)~PCO(多嚢胞性卵巣症候群)について

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第5回: 排卵障害の治療(2)~PCO(多嚢胞性卵巣症候群)について

排卵障害と書くと一つの病気のように感じる方もおられると思いますが、様々な原因と病態があります。
今回はその中でも高頻度に出てくるPCO(多嚢胞性卵巣症候群)について解説をしていきたいと思います。

PCO(多嚢胞性卵巣症候群)

●PCOとは?

卵巣にはたくさんの卵細胞があり、平均して月にひとつずつ成熟し、排卵します。卵細胞は卵胞という袋に包まれていて、発育するにつれてこの袋が大きくなっていき、およそ2cmくらいの大きさになると破裂して、卵胞の中の液体とともに卵細胞が排卵されます。

多嚢胞性卵巣症候群とは卵胞が卵巣の中にたくさんでき、ある程度の大きさにはなるのですが、排卵がおこりにくくなる病気です。

多嚢胞性卵巣症候群というのは長い名前のために、 「polycystic ovary syndrome」という英語の病名の頭文字をとって、PCOSまたはPCOと呼ばれます。

●PCOの症状は?

最も特徴的な症状は下記の通りです。

1)排卵がおこりにくいことによる月経不順や無月経
2)卵胞の中では男性ホルモン(テストステロン)が作られるため、血液中の男性ホルモンが増加。(月経不順の原因、毛深くなることもある)
3)肥満
4)黄体ホルモン分泌不全による月経過多や出血がとまらないなどの症状

●PCOの原因

脳下垂体からはLH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が出て卵巣に働き、卵胞の発育を促しますが、PCOSでは、このうちLHの分泌が増えてFSHとのバランスの乱れがおこり、卵胞がうまく発育できないようです。

排卵がおこらないと、排卵をさせようとさらにLHの分泌が増えるため、乱れがますますひどくなるという悪循環に陥ります。
近年、PCOSはインシュリンと関連しているものと思われています。インシュリンとはすい臓から分泌されるホルモンで、グルコースから体にエネルギーが得られるようにするものです。多嚢胞性卵巣により、このメカニズムに影響する細胞ができ、インシュリンの量が増加するためにより、さらに男性ホルモンも増加するのではないかと言われています。(これにより月経不順、毛深くなります。)

●PCOの診断は?

血液中のホルモン検査やホルモン負荷試験、卵巣の超音波検査で診断します。

ホルモン検査では、LHがFSHより多い(正常のときはFSHのほうが多い)という特徴があります。テストステロン(男性ホルモン)値もしばしば増加しています。

超音波検査では卵巣に普通より多い数の卵胞が見えます。腹腔鏡下手術で卵巣のごく一部をとって顕微鏡検査をすることもあります。

●PCOの治療について

PCOについての根本的な治療法はまだわかっていません。

多嚢胞性卵巣の約70%の女性は排卵に問題をおこすため、不妊症になる可能性が高くなります。よって妊娠を希望される場合は排卵誘発法を行います。

排卵誘発剤クロミフェン・クロミッドをサイクル2~6日の間服用し、80%の女性は排卵をおこします。

またクロミッドで反応がない場合は hMG-hCG療法(排卵をおこすための注射療法)を行ったりします。副腎皮質ホルモンを併用することもあります。

PCOSの場合は、排卵誘発を行ったときに、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とよばれる副作用をおこしやすい傾向があるので注意が必要です。

腹腔鏡下手術で卵巣の表面に小さな穴をたくさん開け、排卵を促す方法も行われることがあります。

さしあたり妊娠の希望がない場合は、月経を周期的におこすような治療を行います。これには、カウフマン療法とよばれるホルモン療法や、低用量ピルなどのホルモン剤を使います。

グリコラン(メトフォルミン)というこれまで糖尿病の患者に使われてきた薬が、PCOSなどの排卵に問題がある女性に効果があるのがわかり、最近では良く使用されるようになりました。

グリコラン(メトフォルミン)がPCOSの女性には効果があるとされています。
通常500mgを日に3度服用、4週間してからホルモン値、腎機能、肝機能などの血液検査をし、排卵状況をさぐります。各自の状況により、さらにエコー、クロミッドとの併用など服用や検査の仕方がさまざまです。

グリコラン (メトフォルミン)は、インスリン抵抗性が高血糖の原因と考えられるインスリン非依存型糖尿病の治療薬です。

PCOSの病因は、卵巣内アンドロゲン濃度の上昇であり、機能性卵巣アンドロゲン過剰分泌と理解されています。インスリンは直接卵巣に作用して、卵巣内のアンドロゲン産生を促進する働きがあります。 PCOSの患者がグリコラン(メトフォルミン)を内服すると、血中のインスリンが減少し、その結果、卵巣内のアンドロゲンが減少すると報告されています。

<最後に>

今、不妊治療をされている方でこのPCOと言われている方は多いと思います。
急にドクターから今まで聞いた事のないような病気の名前を言われて、なんだかとても 不安に感じた方も多いのではないでしょうか?

先生方にお話を伺ってみると、PCOだからと言ってそんなに深刻に考える必要はないが、やはりカラダに異常があることは事実なので、生活を見直す事が大事だし、そして妊娠を希望されるならまめにクリニックに来て、カラダの状態をチェックさせて欲しいというコメントをされていました。

これは私の勝手な意見なので参考程度に考えて欲しいのですが、このPCOというのはどうやら肥満や糖代謝と関連が深いので、ダイエットや甘い物の過剰な摂取が関わっているのではないかと推測しています。

原因はそれだけではないですが、もしあなたが甘いものを毎日大量に摂っていたり、体重が過剰な場合はぜひ、その部分を改善する事がPCOの改善に結びつくのではないかと思います。
「健康なカラダに妊娠はやってくる」
この原則だけは頭の片隅に置いて頂ければと思います。

次回は、排卵障害治療のパート3として高プロラクチン血症の治療について解説をしてまいります。

■コラム執筆 池上文尋 氏

オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。

池上先生のイラスト
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