12、セックスレスについての基礎知識(男性編)

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第12回: セックスレスについての基礎知識(男性編)

最近、テレビや雑誌でよく取り上げらる言葉に「セックスレス」「草食系」というワードがあります。
一般的には、若い男性が女性に対してあまり積極的に性的なアクションを起こさないという意味合いで使われる事が多いようです。

しかし、医療現場ではこの数年、セックスレスが増えてきており、それが原因で不妊治療に来ているご夫婦が増えているという印象を持っているようです。
先日もあるドクターと話をしていたら、「最近は夫婦で来る患者さんの約半数がセックスレスの問題を抱えているよ」と話してくれました。

そこで今回は、セックスレスの基礎的な情報を幅広く解説を行ってまいります。

セックスレスの定義と割合

セックスレスとは、長期間セックスをしていない夫婦のことをいいます。日本性科学会による定義では、「特殊な事情が認められないのにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1か月以上もなく、その後も長期にわたることが予想される場合」を指します。

2004年度の厚生労働省と日本家族計画協会の共同調査によると、日本の夫婦の32%がセックスレスで、1年以上性交渉のない夫婦は全夫婦の20%であるとのこと。アメリカにおいては性交渉が1年に10回を下回る夫婦をセックスレスとし、20%の夫婦が当てはまるといわれております。セックスレスには男性側と女性側の原因、もしくは両方が原因というケースが考えられます。

今回は男性にフォーカスして解説を行なってまいります。

セックスレスの原因別分類

男性のセックスレスは、原因別で大きく分けて3つに分類されます。
それは下記の通りです。

● 性欲相障害

性欲がなんらかの理由で障害されているケースで、「性欲低下」と「性嫌悪症」に分類されています。

● 興奮相障害

性的な興奮が障害されているケースで男性ではED(勃起障害)がそれにあたります。

● オルガスム相障害

男性では膣内射精障害を主とする遅漏または早漏がそれにあたります。
セックスレスの場合、上記の障害が単一、もしくは複合して起きることになります。

セックスレス検査と治療について

1) 性欲低下(性欲欠乏)

国際疾病分類という本では「性欲欠如あるいは性欲喪失」の部分に分類され、性行為が困難な状態になるのではなく、自発的な性行為がより少なくなることを意味していると解説されています。

性欲低下の検査には、心理的な問題がある場合も多いので心理テストを行い、ノイローゼ、うつ傾向、不安状態を調査します。

また、血中の男性ホルモンの測定や、先ほど述べたプロラクチンなどの性欲減退に影響しそうなホルモンを検査します。糖尿病や甲状腺疾患、副腎疾患でも性欲低下をおこす原因となることがありますので、それらの疾患に関連する検査を行うこともあります。

性欲減退の状態を客観的に調べる方法がないため、患者さん自身の訴えや、また治療で改善した場合でも、患者さん自身からの報告を聞くような問診による判定方法しかありません。

男性ホルモンの低下が原因で性欲が減退した場合は、男性ホルモン(テストステロン)補充療法が効くことがあります。性欲促進剤で、脳の性に関与する部位を活性化して、性欲を改善させる方法も使うことがあります。

心理的な原因の場合は、カウンセリングで治療をするケースもあります。

明らかに原因がわかり診断できた人は治療できますが、それはわずかな人に限られます。
先ほどの高プロラクチン血症に対してはブロモクリプチンというプロラクチンを低下させる薬の内服を行い、プロラクチン産生腫瘍と診断された場合にはその摘出術を行います。

2) 性嫌悪症

性行為あるいは性的な事柄そのものに対して嫌悪感を抱くこと、またはそのような状態のことをいいます。

性嫌悪の人、すなわち性嫌悪者が嫌悪感を抱く性行為の種類やその程度は様々であり、また性嫌悪の人が嫌悪感を抱く性的な事柄についても、種々の性的表現、性的な情報、他者からの性的視線など多岐にわたっています。

原因についてはまだ完全に解明されておらず、非常に治療が難しい症状であると言えます。検査方法も確立されていないのが現状です。

症状は千差万別であり、直接的な性干渉を行える場合や、異性との接触すらも行えない極度なケースなど様々で、治療法も個々の症状に適当と思われる手法がとられる必要があります。

カウンセリングやセラピーなどで症状が良化することがありますが、20%程度の治癒率と、完治する例は非常に少なく、治療法としては抗うつ剤を投与することが多いようです。

3) ED(勃起障害)

男性の性機能障害(Sexual Dysfunction)の一種であり、陰茎の勃起の発現あるいは維持ができないために満足に性交の行えない状態、または性交時に有効な勃起が得られないため満足な性交が得られない状態、通常性交のチャンスの75%以上で性交が行えない状態をいいます。

EDに悩む人は先進国において男性人口の1割を占めるといわれ、加齢に伴い増加傾向にあります。器質性のEDは50代以上に多く見られますが、機能性(心因性)のものは若年層にも多く見られるようです。

EDについての検査・治療については、次回の記事にて詳しくご紹介したいと思います。
特に不妊治療との関係についても取り上げる予定です。

膣内射精障害

『膣内射精障害』とは、膣刺激による射精が困難になることをいいます。
広義には男性の不妊症でもあり、性機能障害(Sexual Dysfunction)の内の、射精障害の一種でもあります。

射精障害の分類ではA群の「射精、オルガスム共に無いもの」(性機能障害)に相当すると考えられます。なお、勃起のメカニズムと射精のメカニズムは全く異なるため、勃起機能に特に異常が無くとも射精障害に陥ることはまま有ることです。

原因については、男性が行うオナニー(自慰)において、自慰の強さやAVの刺激の強さが起因となることも多いようです。

一般的な性行為障害、射精障害の場合、トフラニール(塩酸イミプラミン、交感神経を刺激する薬剤)の処方、ネオスチグミン(ワゴスチグミン、副交感神経に作用する薬剤)のくも膜下腔注入法、フィオスチグミンの皮下投与、電気刺激による(強制的な)射精などが考えられています。

現在では、男性の精巣から直接精子を採取しての体外受精や顕微授精が可能となっているため、「不妊症」として捉えた場合、治療は比較的容易となってきています。
膣内射精障害独特の治療法としては、オナニーの方法の指導が挙げられます。

<最後に>

最近、草食系男子が増えていることにより、セックスレスの問題を取り上げられる事が増えてきましたが、男性のセックスレスにも様々な種類があることがお分かり頂けたかと思います。

セックスレスになった場合、まず相談するべきなのは泌尿器科です。
セックスレス相談を受け付けてくれるクリニックや病院を探すと良いかと思います。

また、ご自身で心に問題があると判断された場合は、精神的アプローチで診療されているクリニックもあるのでそちらがお勧めになります。

不妊治療をされていてセックスレスを治療されたい場合は、不妊専門クリニックで泌尿器科外来を受診されると良いかと思います。
とにかく“恥ずかしいから”とそのままにしているのがよくありません。速やかに医療機関にて受診される事をお勧めいたします。

■コラム執筆 池上文尋 氏

オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。

池上先生のイラスト
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