11、子宮頸管が原因の不妊症について

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第11回: 子宮頸管が原因の不妊症について

子宮頸管にトラブルがあると精子が卵管の方へ上がっていけなくなるので、妊娠が成立しないという事になります。
今回はその子宮頸管因子が原因と考えられる不妊について解説を行ってまいります。

子宮頚管とは?

子宮頚管とは、膣と子宮腔を結ぶ子宮頸部のことです。
子宮は上部の3分の2が子宮体部に占められ、残りの3分の1が「子宮頚管」がある子宮頸部になります。

排卵期になると子宮頚管からアルカリ性の粘液(子宮頚管粘液)を分泌されるようになり、精子が子宮に進入するときにその動きを活発にしてくれる働きをします。

子宮

子宮頸管因子の原因

1)子宮頸管粘液の分泌不全

子宮頸管粘液の分泌が十分でないので精子が上っていけない。

2)子宮頸管の炎症

子宮頸管の内部の炎症が精子の侵入を阻んでしまう。
その原因としてはクラミジア感染、HPV(人パピローマウイルス)の感染、子宮内膜症などが考えられます。

3)抗精子抗体の存在

夫の精子と自分の子宮頸管粘液の適合性が悪く、精子を抗体でやっつけてしまうために精子が死滅してしまう。

子宮頸管因子の検査

●子宮頚管粘液検査

排卵期に合わせて子宮頸管粘液を採取して、量や粘り気、結晶形成などをチェックする検査です。排卵日の2~3日前が良いと言われています。
排卵期になると粘液の量が増えて粘りが出てきます。顕微鏡で観察するとシダ状の結晶がみえます。

●フーナーテスト(性交後試験)

フーナーテストとは、性交後、子宮頚管粘液の中にある精子の状態を見る検査です。精子と子宮頚管粘液との相性を調べる検査と言っても良いと思います。

検査の12時間前くらいまでに性交渉をして、 子宮頚管から粘液を採取して 顕微鏡で調べます。粘液中に精子が確認できないと無精子症や抗精子抗体、子宮頚管炎などを疑います。

●抗精子抗体検査

フーナーテストの結果が何回受けても思わしくない時には、女性の体内に抗精子抗体の疑いがあるので、抗精子抗体検査で調べます。
抗精子抗体は血液検査で調べます。女性の血液をとり、その血清の中に健康な男性の精子を入れて様子を観察するという検査方法が一般的です。精子の様子をみて、抗精子抗体がないかどうかを判断します。

●クラミジア検査

クラミジア検査は大きく2つ、血液検査による「抗体検査」と、尿や患部の粘膜などを採取して行う「抗原検査」に分けることができます。

医療機関では血液検査をする事が多いようです。それによって、今の状況だけではなく過去のクラミジア感染歴も分かります。
最近では自宅で簡単に使える郵送検査も増えてきています。それは抗原検査になります。
膣内の分泌物を綿棒で拭い採って、それを送る事により、検査してもらうものです。

●HPV検査

日本国内で実施されている子宮頸癌検診の検査法は、細胞診とHPV検査です。いずれもWHO(世界保健機関)で、子宮頸癌の検診検査として有効性が認められた検査法です。

細胞診

子宮頸癌を疑うような異常細胞がないか判定する検査。
子宮頸部から採取した細胞を色素で染色し、異常細胞がないか顕微鏡で観察する検査法。

HPV 検査

子宮頸癌の原因である高リスク型 HPV 感染の有無を判定する検査。
細胞診と同様に子宮頸部から採取した細胞を用い、HPV 感染を判定する検査法。

※細胞診と HPV 検査を併用した場合、癌または前癌病変の発見率はほぼ100%とされています。

子宮頸管因子の治療

1) 子宮頸管粘液に問題がある場合

子宮頸管粘液はエストロゲンに影響されるので、その部分を改善する治療法を選択される事になります。
また、クロミッドはエストロゲンの作用をブロックするので、子宮警官粘液が減少してしまう事があります。その場合は、クロミッド投与を止め、HMG-HCG療法に切り替えることになります。

2) 子宮頸管の炎症

まずは炎症を起こしている原因を取り除く治療になります。
例えば、クラミジアの場合はクラミジア感染について治療することになるので、抗生物質を投与することになります。

3)抗精子抗体

抗精子抗体が陽性の症例においても、タイミング法や人工授精により妊娠することがあります。出来るだけ、抗体を作らないような工夫、膣内や子宮内に炎症を起こさない、男性側の方にも精子にトラブルがないようにするなどの対処が必要です。

実際のところは抗精子抗体が見つかると、人工授精、体外受精が選択される事が多いようです。

<最後に>

子宮頸管因子と言ってもその短い管の中で、色々と原因があることがお分かりになられたかと思います。

子宮頸管は外部と子宮の間にあって、外からの細菌やウイルスを防御する役割を持っています。よって、精子を受け入れる時期も決まっているし、それ以外は何も受け付けてくれません。
また、細菌やウイルスの侵入もよくあるので、炎症が 起きやすいのも特徴的です。

そのためにもやはり定期的な婦人科検診によって子宮頸管のチェックは必須です。 (毎回しつこいぐらい言いますが・・・・)。

それは不妊治療だけではなく、自分の健康管理においても重要な事だと考えられます。

■コラム執筆 池上文尋 氏

オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。

池上先生のイラスト
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