20、子宮内膜症の基礎知識(2)

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第20回: 子宮内膜症の基礎知識(2) ~治療法について~

子宮内膜症において比較的多く受ける質問があります。「子宮内膜症があるのですが、不妊治療とどちらを先にすればいいのですか?」という質問です。この回答は簡単です。先に子宮内膜症を治療すべきです。身体の中に炎症を持っていることは妊娠・出産にとって良いことではないからです。ということで今回も前回に続き、子宮内膜症の治療について解説を行ってまいります。

子宮内膜症の治療法

子宮内膜症の治療には、手術療法薬物療法の2通りがあります。
手術療法には、「病状を直接、目で見て確認できる」「病変部位を除去できる」というメリットがありますが、「術創が残る」「入院が必要」「患者への負担が大きい」などのデメリットがあります。

薬物療法は「患者への負担が少ない」という反面、「治療に時間がかかる」「薬の副作用がある」というデメリットがあります。よって、患者さんの症状により、治療法が選択されます。

●子宮内膜症の手術療法

一概に手術療法といっても、その中にも何通りかの方法があります。

1)子宮内膜症の病巣のみを除去する方法

腹腔鏡手術は、確定診断をする場合や、超音波検査の結果、開腹をするまでではないと判断された場合、不妊治療を目的とする場合が多いです。

方法としては、腹部に小さな穴を数ヶ所開け、お腹の中を炭酸ガスで膨らませます。1つの穴からは、中の様子をモニターに映し出すための腹腔鏡を挿入し、もう一つの穴からは病巣部を除去するための器具を挿入します。

開腹手術は、チョコレート嚢腫であったり、癒着がひどい場合などに選択されることが多いようです。方法としては、腹部を大きく切開(8-10cm)してから、病巣部のみを除去します。

2)子宮全摘出

卵巣まですべて摘出してしまう方法は、子宮内膜症の唯一の根治術です。

症状が非常に重症である場合、閉経も近い年齢の場合に選択されることが多いようです。しかし、卵巣も摘出してしまうと術後にホルモンバランスの崩れにより、更年期障害などの障害が起こる可能性があります。

よって、卵巣の一部を残す準根治術という方法もあります。こちらは重症の場合、妊娠を望んでいない場合などに選択されます。

●子宮内膜症の薬物療法

子宮内膜症の薬物治療では、薬によって月経を止める治療法です。

子宮内膜症は毎月の月経のたびに病巣部から出血し、悪化する可能性があります。よって、月経を止めることで病気の進行を抑え、その間に自身の治癒能力などによって病巣の治癒をはかります。薬物療法にも、何通りかの方法があります。

1)偽閉経療法

女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑えることで月経を止め、体を閉経した状態にする治療法です。

▽GnRHアナログ療法

人工的に閉経状態を作るため、更年期症状(のぼせ、ほてり、肩こり、発汗、頭痛など)の副作用があります。また、骨密度が下がってしまうため最長6か月間までしか使うことができません。点鼻薬や注射剤があります。

▽ダナゾール療法

ステロイド製剤のダナゾールは男性ホルモンの誘導体です。よって、ニキビや体重増加といった副作用があります。こちらは通常4か月内服します。

2)偽妊娠療法

身体を擬似妊娠状態にすることで、エストロゲンの分泌を抑え、月経を止める治療法です。擬閉経療法と比較すると、副作用が少なくてすむこと、長期間に渡って服用することが可能であることがメリットです。

しかし、擬閉経療法に比べると治療効果が薄く、長期間の治療を行わないと治療効果が期待できないという点は考慮すべき所です。

▽低用量ピル

排卵や子宮内膜の増殖を抑える働きがあり、飲み続けることで月経量が減って月経痛が軽減されます。もともとは避妊薬のため、妊娠の予定がない女性の治療に選択されます。

重い副作用はほとんどありません。人によっては飲み始めの1~2か月の間に吐き気や不正出血があったり、服用期間中に体重増加が見られる場合もあります。保険適応になっている薬剤はルナベルです。

▽黄体ホルモン療法

ピルには、2種類の女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が含まれるのに対し、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを含む薬剤で治療する方法です。

偽閉経療法と同じく、卵巣から出るエストロゲンを抑える効果がありますが、偽閉経療法が完全に女性ホルモンを抑えきってしまうのに対し、こちらはやや弱めにコントロールすることができます。

よって、副作用である更年期症状や骨密度の低下が軽減され、長期にわたって服用することが可能です。主な副作用は不正出血ですが、偽閉経療法を数か月行った後に黄体ホルモン療法を行うと改善される場合がほとんどです。

3)ディナゲスト療法

プロゲステロン受容体を選択的に活性化し、卵巣機能抑制作用および子宮内膜細胞増殖抑制作用により有効性を示す、新しい経口剤です。長期にわたって使っても効果が持続する特徴を持っています。

不妊治療と子宮内膜症

不妊治療を行うにあたり、もし子宮内膜症が見つかるとそちらの治療を先に行います。それは子宮内膜症自体が不妊の原因であるからです。子宮内、卵巣内に内膜症があることはそこに炎症が存在するので妊娠の妨げとなります。

また、癒着があると卵管の動きを悪くしたり、動けなくしてしまいます。よって、内膜症の治療を行う事になります。

それから内膜症を持っているとSEXに痛みを生じる事が多く、セックスレスの原因にもなります。セックスで痛みや違和感が出て来た方はクリニックでの受診をお勧め致します。

実際、医療機関でもセックスレスの相談に来られて内膜症を見つける事が多いとのことです。

<最後に>

子宮内膜症に関してはまだ原因は不明です。現在言われているのはあくまでも仮説であって、絶対なものではありません。

私の友人で製薬企業の研究所に勤務していたF氏は、アレルギー説の可能性が高い事を話してくれました。今はアレルギー疾患の人が多い。アレルギーが皮膚に出ればアトピー、気管に出れば喘息、そして子宮に出て来たのが内膜症ではないかと話していました。その理由として抗アレルギー剤が内膜症に効果を示すケースが多いからだそうです。

また、月経回数との関係もあるのでは?というドクターもおられます。昔の女性は、子だくさんで、常に妊娠している状態か授乳している状態だったので一生のうち月経の回数は50回くらいしかなかったと言われています。ところが、現代の女性の月経回数は、500回にも及ぶと言われ、そういう関連性を 指摘されています。

まだまだ不明な点が多い疾患ですが、妊娠を希望される方には必ず乗り越えないといけないハードルです。

今後も新しい情報が入ってきたらこちらで紹介していきたいと思います。

■コラム執筆 池上文尋 氏

オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。

池上先生のイラスト
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