3、排卵障害 ~種類と検査について~

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第3回: 排卵障害 ~種類と検査について~

女性側の未妊(不妊)の原因として最も高い割合(約30%)を占めるのが排卵障害です。
排卵障害と書くとなんだか難しいような気がしますが、簡単に言うと「排卵に関与するホルモンが正常に機能していないために妊娠に至らない」というものです。

その種類は下記のように分けることが出来ます。
これらは密接に関連しているために、必ずしも1つのものと捉えることが出来ないものも多いようです。

排卵障害の種類と関わるホルモン

●視床下部性:
下垂体のコントロールを行なっている視床下部のホルモン分泌異常により、下垂体に影響を与えてしまう。

→関わるホルモン:GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)

●下垂体性:
下垂体のホルモン分泌異常。FSHやLHの分泌不全によって、卵子が育たない、卵巣からの排卵がうまくいかない状態。

→関わるホルモン:FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)

●卵巣性:
卵巣から分泌されるホルモンの異常。エストロゲンは子宮頚管粘液の分泌、プロゲステロンは子宮内膜の肥厚に深く関わっています。

→関わるホルモン:エストロゲン、プロゲステロン

●高プロラクチン血症:
妊娠していないにもかかわらず、なんらかの理由でプロラクチンが過剰に分泌されてしまう疾患。月経や排卵が抑制されてしまうので、排卵障害をひきおこします。また、受精卵の着床障害をひきおこすこともあります。

→関わるホルモン:プロラクチン(乳汁分泌ホルモン・下垂体前葉から分泌)

●多のう胞性卵巣症候群:
通常は赤ちゃんの卵が入っている卵胞は月に1つずつ成熟しますが、その卵胞が卵巣内にいくつもできてしまうことです。卵胞はたくさんあってもその中身は嚢胞状に変化してしまい、1つ1つは成熟しにくくなっています。多嚢胞性卵巣の9割の人に排卵障害があるといい、また排卵障害の人の20~40%が多嚢胞性卵巣症候群であると言われています。無月経や不正出血、男性ホルモン過剰(にきび、多毛)、肥満などの症状が特徴的です。

→関わるホルモン:インシュリン

●甲状腺ホルモン異常:
甲状腺刺激ホルモン過剰の状態はどのような内分泌的影響があるかというと、まずカラダ全体のホルモンバランスが崩れます。それに伴い、規則正しい性関連ホ ルモンが異常をきたす事になります。よって月経不順や無月経になることも珍しくありません。それらの結果、妊娠しにくい状態になるということです。

→関わるホルモン:甲状腺ホルモン

上記のように種類を見ていくと・・・
なんだか気が遠くなっていくと思われるのではないでしょうか?

でも、ここで知っておいて欲しいのは【第1回】でも解説したとおり、ホルモンと月経周期と排卵と妊娠はすべて連動しているということです。
種類はドクターの治療上の便宜を考えて、上記のように分けて分類していますが、単一原因のものは少ないと思っています。
なぜこのような事が起きるのか?という原因については諸説がありますが、ほとんどが原因不明です。ストレスであったり、生活習慣であったり、遺伝的なものであったり、様々な要因が絡んでホルモンの分泌不全を起こしていると考えられています。

ホルモン検査について

不妊専門クリニックに行って、必ず行なう検査は“ホルモン検査”です。血液中の生殖に関係する様々なホルモンの値を測って、排卵や着床の妨げになりそうなものはないかを調べる血液検査です。

その項目と計測時期は下記の通りです。

調べておきたいホルモン値には、それぞれ測定に最適な時期があります。

月経3~4日目くらい(卵胞期初期)

・黄体化ホルモン(LH)
・卵胞刺激ホルモン(FSH)

高温期の中頃(黄体期中期)

・卵胞ホルモン(エストロゲン)
・黄体ホルモン(プロゲステロン)

どの時期でもOK

・乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)
・甲状腺ホルモン

各ホルモン検査の値から分かる事は下記のことです。

LH、FSHともに低い

視床下部もしくは脳下垂体の機能に問題があります。
GnRHホルモン負荷試験でどちらの方に原因があるかを調べる事が出来ます。

FSHはほぼ正常だが、LHが高い

多嚢胞性卵巣(PCOS)の可能性があります。
さらに、超音波検査で卵巣に多くの卵胞が確認されれば、PCOと診断されます。

FSHの基礎値が10mlU/mlよりも高い 卵巣の機能に異常があります。

20mlU/ml以上になると、妊娠が困難な状況と判断されます。

黄体期中期に測定した黄体ホルモンが10ng/ml以下

黄体機能不全と診断されます。
この状態が続くと着床障害や流産の原因になります。

プロラクチン値が高い

高プロラクチン血症と診断されます。
値が異常に高いときには、MRIで脳下垂体に腫瘍がないかを調べます。

甲状腺ホルモン値の異常(多くても少なくても)

排卵障害、着床障害、流産などの原因になります。
甲状腺機能に異常が見つかった場合は、甲状腺治療専門医との連携が大切です。

<今回のまとめ>

女性の未妊(不妊)の主な原因の中で、最も頻度の高い排卵障害も様々な種類があることをご理解いただけたと思います。クリニックではこれらの身体の状況を把握するために血液検査(ホルモン検査)をしているのです。

ホルモン検査は、その時の身体の状態や時間によっても大きく変動する事がありますので、一度調べただけで、一喜一憂しない方が良いと思います。何回か調べるうちに自分の身体の傾向が分かるようになればいいかと思います。

これは私の勝手な推測ですが、排卵障害の中でも多いPCO(多嚢胞性卵巣)の方は生活習慣、甲状腺ホルモンの方はストレスがきっかけになっていることが多いように感じます。
また、睡眠不足も少なからずホルモンバランスに影響を与えていると思います。

もちろんクリニックでの治療も大事ですが、検査値が良くなかった場合、自分の生活を見直してみることが、それらの異常を正常化させることに結びつくように感じます。


次回は、排卵障害の治療について解説をしていきたいと思います。

■コラム執筆 池上文尋 氏

オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。

池上先生のイラスト
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