7、排卵障害の治療(4)~黄体機能不全

妊娠力UP@基礎知識講座

妊娠力UP@基礎知識講座

■知れば知るほど引き寄せる!妊娠力UP@基礎知識講座

第7回: 排卵障害の治療(4)~黄体機能不全について

排卵障害シリーズの最終記事です。
今回は黄体機能不全について解説を行なってまいります。

黄体機能不全

●黄体とは?

黄体とは、卵巣で卵胞が排卵したあとに変化してつくられる器官です。
ここでは主にプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。

このホルモンには、子宮の内膜の機能を良くして子宮の内膜に受精した卵が着床するのをサポートする働きや、子宮の収縮を抑えて流産にならないように予防する働きがあります。
また、基礎体温を高温状態にするのもこのホルモンの働きです。

●黄体機能不全とは?

黄体機能不全とは、黄体が十分に機能せず、排卵後に子宮内膜を妊娠に適した厚さを維持しておくための黄体ホルモンの分泌が不足している状態のことです。
黄体ホルモンの分泌が不足すると、排卵後、正常より短い日数で子宮内膜が維持しきれなくなって頻発月経や不正出血を起こしたり、着床困難による不妊の原因になったりします。

●黄体機能不全の原因は?

黄体機能不全の原因としては下記のようなものが考えられています。

○卵胞の発育不全~卵胞の発育や排卵後の黄体への変化がうまくいっておらず、十分な量の黄体ホルモンを放出できない。
○脳下垂体からのFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)の分泌が不十分。
○卵巣に問題があり、FSH・LHに正常に反応して卵胞の発育・排卵が行えていない。
○黄体ホルモンは十分に分泌されていても、子宮内膜の感受性が悪いと、黄体ホルモン不足と同様の状態に陥る。
○高プロラクチン血症や高アンドロゲン血症や甲状腺機能障害

それから、糖尿病などの全身性の病気や喫煙などの嗜好品、精神的ストレスによって卵巣機能不全となり、黄体機能不全の症状を示すこともあります。
しかし、このような機能異常がなぜ起こるかについての根本的な病因は、明確なことがわかっていません。

●診断基準は?

黄体機能不全は、基礎体温表、ホルモン検査、子宮内膜の組織検査などによって診断されます。

1) 基礎体温
高温相に持続が10日以下、低温相と高温相の平均温度差が0.3℃以下、高温相になるまで体温がだらだらと上昇することなどを参考にします。

2) ホルモン検査
黄体からでるプロゲステロンというホルモンを高温相で1から3回採血して、十分な量のプロゲステロンが出ているかどうか調べます。(高温相5~7日目に測定し、プロゲステロン 10ng/ml未満)
他に黄体機能不全の原因となるようなホルモンの採血をします(プロラクチン、男性ホルモン、甲状腺ホルモンなど)

3) 子宮内膜の組織検査
高温相のだいたい真ん中くらいの時に子宮の内膜から組織を一部とってきて調べます。とってきた組織が排卵してから何日経った内膜に相当するかと実際排卵から何日経っているかとのずれが大きくないかどうかをみます。
子宮内膜の厚さは8mm以内。

●黄体機能不全の治療

治療は主に二つの方法で行われますが、あくまで妊娠を希望している場合に限られます。妊娠を希望していない場合は、そのまま経過をみていくことになります。
一つ目は黄体ホルモン(プロゲステロン)が不足しているのだから、それを経口薬や注射で補充するというものです。今まで一般的に行なわれてきた治療です。
しかし、最近では、黄体機能不全は卵胞の発育障害や排卵障害がその原因であることから、黄体そのものに問題がある黄体機能不全はないという考え方に移行してきています。

よって二つ目の治療は、黄体ホルモンを補充するより、排卵誘発剤(クロミッドなど)による排卵の促進をおこなう方が理にかなっているということで、そちらに重きを置くケースが増えています。また、漢方薬を使うケースもあるようです。

<最後に>

先生方にお話を伺うと黄体機能不全の診断は月経周期毎に毎回同じ黄体機能であるとは言えないこと(変動がある)や基礎体温の測定誤差などもあるので診断が難しいようです。
だから、一度だけ検査値に異常が出たからといって、「黄体機能不全があり不妊症の原因となっている」とは断定できないそうです。

高温相での基礎体温グラフが14日間きれいに出ていれば問題ないのですが、やはり不妊治療をされている方はグラフが乱れている方も多いとのこと。
この疾患もよくわかっていないから逆に投薬や治療を行うことにより、反応してくれればいいなと思って治療されているケースも多いかと思います。よって、高プロラクチン血症の疑いがある方などは先にそちらの治療をして、その様子をうかがうこともあります。

ここでも一番の禁止事項は黄体機能不全という言葉に過剰反応しないことだと思います。
ちょっと内膜をサポートする力が弱いのかな”ぐらいの認識でよいのかと思います。
そして、不安であれば主治医によく相談し、出来るだけ不安な気持ちがストレスにならないようにしてくださいね。

■コラム執筆 池上文尋 氏

オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。

池上先生のイラスト
まずは自分の状態を知ろう!妊娠しやすいからだ診断へ
ページトップへ