「不妊治療のために仕事を辞めた」と聞くと、「不妊治療をするためには仕事を辞めなければいけないのか」と不安になります。
一方で、不妊治療にかかる費用や、出産後に子どもにかかる費用を考えると「できれば仕事を続けたい」と、不妊治療と仕事の両立を希望している人は少なくありません。
また、不妊治療のために仕事を辞めてしまうと、不妊治療のことばかり考えてしまい、気持ちが塞ぎこんでしまう人もいます。
不妊治療が長引いてくると、「仕事を辞めてまで努力しているのに報われないのはなぜ?」と、ストレスになってしまう場合もあります。
不妊治療を受ける人、体外受精による出生児の数は年々増え続けています。
仕事をしながら、不妊治療をスタートさせる人も多くいます。
NPO法人Fine「仕事と治療の両立についてのアンケート」によると
●仕事と治療の両立が難しいと91.9%の人が感じている
「不妊治療のために仕事を辞めた人」がいる一方、「仕事をしながら不妊治療を成功させた人」もいます。
そこで、今回は仕事と不妊治療を両立するポイントをご紹介します。
不妊治療と仕事の両立の問題点
不妊治療を始めたばかりのころは、有給休暇や仕事の時間外を使って治療を頑張ることが出来ても、体外受精や顕微授精を行う場合は、排卵周期に合わせて通院をしなければなりません。
そうなると直前になるまで検査日が分からなかったり、通院の回数が増えたりして、仕事を休んだり早退する必要がでてきます。
また、治療のための検査や投薬などで体にかかる負担から、体調を崩し仕事を休む場合もあります。
そのため、不妊治療を継続するためには、職場の協力がどうしても不可欠になります。
自分が休んでしまう分をサポートしてくれる周りの人に感謝の気持ちを伝えるようにして、不妊治療と仕事を両立できるようにしましょう。
不妊治療と仕事の両立のコツ
仕事をしながら不妊治療を始めるときに、両立するためにはコツがあります。
それは、病院選びと周りへの相談です。
■病院選び
不妊治療を受ける病院を選ぶ場合は、できる限り仕事に与える影響が少なくなる病院を選ぶのがおすすめです。
例えば、職場の近くや通勤途中にある通いやすい場所にある不妊治療クリニックです。
治療のために仕事を途中で抜けなければいけない場合でも、短い時間で職場に戻れます。
また、仕事が休みの土日や、遅い時間まで診療している病院もあるので、調べてみましょう。
この他、既に産婦人科でタイミング法などの不妊治療を行っている場合は、その病院で人工授精ができるのであれば、(別途初診料が掛からないので)費用的にはステップアップしやすいかもしれません。
ただ、産婦人科に産科もある場合は、妊婦さんや赤ちゃんなど子連れで受診される方とも一緒になることが苦しいと感じる方も少なくありません。その場合は、不妊治療専門の病院やクリニックの方がストレスが少ないでしょう。
また、実績のある不妊治療専門の病院やクリニックだと、専門のドクターをはじめ、専門のスタッフや専門の医療機器など充実した治療環境を備えていることが多く、「出口が無い長いトンネル」と言われる不妊治療の治療期間や治療内容によっては費用が抑えられることも考えられます。
治療実績など、不妊治療に関しての情報を詳しく掲載している病院やクリニックのホームページをよく見て受診されることをおすすめいたします。
さらに、お医者さんにも仕事と両立して不妊治療を進めていく意思を、伝えておきましょう。どのように不妊治療を進めていくのか相談し、「これなら仕事と両立できそうだ」と思える病院を見つけることが大切です。
■周りへの相談
仕事で迷惑をかけそうな相手には、あらかじめ不妊治療を受けようと思っていることを、伝えておくといいでしょう。
プライベートなことなので話しにくいと感じますが、理由もわからず欠勤や遅刻・早退が多いと、周りから不信感を持たれてしまいます。
とはいえ、職場で治療のことはなかなか話づらいこともあります。
NPO法人Fine「仕事と治療の両立についてのアンケート」によると
●職場で不妊治療のこと話づらかったと感じた人68.8%
仕事と不妊治療を両立したい場合、会社や職場の人に話しにくいと思いますが少しでも協力してもらえるように、せめて直属の上司にだけでも伝えておくようにしましょう。
現状
厚生労働省の平成29年度の調査結果によると、企業を対象としたアンケートで
・不妊治療を行っている従業員が利用できる柔軟な働き方を可能とする制度がある企業は43%
・そのうち最も多い制度は「半日単位・時間単位の休暇制度」
と報告されています。
また、労働者を対象としたアンケートでは
・不妊治療をしたことがある、もしくは、予定している割合は14%
・不妊治療をしたことがある回答者のうち半数以上が仕事と両立しているが、16%は退職し、8%が雇用形態を変更している
と報告されています。
不妊治療と仕事の両立をあきらめたほうがいい場合
どんなに不妊治療と仕事の両立を頑張っていても、仕事をすることで強いストレスになってしまう場合は、不妊治療をあきらめるか、仕事や職場を変えるなどストレスを減らすかを考えたほうがいいでしょう。ストレスは妊娠の大敵です。
ストレス源から解放されたとたんに妊娠できたというケースも少なくありません。
どうしても不妊治療と仕事の両立が難しく、ストレスフルな生活になってしまっているという場合は、一度立ち止まって、どちらを優先するか考えたほうがいいでしょう。今の職場が不妊治療に理解がない、長時間労働で休みが取れない。それでも何か仕事はしていたいという場合は、パートや短時間の派遣などに転職することも視野に入れてもいいでしょう。
最後に、
厚生労働省でも、不妊に悩む夫婦への支援ということで不妊専門相談センターや事業主向けのリーフレット作成などを行っています。
このような活動が浸透し、仕事と治療の両立を希望する人が、今よりももっと両立しやすい世の中になることを切に願っています。
全国の不妊専門相談センター一覧(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken03/